スイカ食べたい日記

本・映画の感想、適応障害の経過、暴君な夫との日常

【読書感想】人生の教養が身につく名言集 出口治明

出口さんはライフネット生命の創業者にして、現在立命館アジア太平洋大学の学長を務められている方です。

この本はそんな出口さんが人生を送る上で重要と考える名言を紹介しています。

以前似たような本で『100年後まで残したい 日本人のすごい名言』(齋藤孝)を読んだことがあります。

齋藤先生はその名言について「どのような人物が、どのような状況/背景を持って残した言葉か」にスポットを当てて紹介されているのに対し、

出口さんは「その名言を基に自身の生き方、考え方を振り返る」といった内容が多い気がします。

私はこの本で紹介されている名言よりも、「出口治明」という人物の考え方や人柄にとても興味を持ちました。

 

出口さんのすごいところ①:歴史を知れば失敗は怖くない

出口さんは大変読書家で、特に歴史の本を好んで読まれるのだそう。

そんな中で、出口さんが見つけたことが、「人の企てはほとんどが成就しない」ことだといいます。

出口さんは会社員時代、出世争いに敗れいわゆる左遷された経験があるそうですが、「世の中のサラリーマン全体で言えば、左遷されたことがない人の方が少数派だ」として全く落ち込まず、周囲の人を驚かせたそうです。

この「上手くいかなくても世の中の多数派になるだけ」という考え方ってすごく勇気をもらえますよね。

 

歴史上の人物、特に偉人とされるような人物って自分の本懐を遂げて大成功しているように見えますが、一人一人見ていくと意外とみんな失敗してたり挫折してるんですよね。

例えば、今年の大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一の前半生ってかなり紆余曲折していて、今の若い世代に重なるところも多いんじゃないかと思います。

  • 流行にのって(?)攘夷活動を志す
  • 攘夷志士として活動したかったのに、縁あって一橋家家臣となる
  • 一橋家当主・慶喜に心酔、かつての攘夷仲間からは裏切り者扱い
  • たまたま割り当てられた勘定役が大ハマり、財布担当としてフランス視察にも同行
  • フランス視察で株式会社のヒントを得るも、日本では大政奉還が起こり、勤め先(幕府)がなくなる

こうしてみると、後に「日本経済の父」と呼ばれるような彼でさえも、一組織人として社会情勢に翻弄され、身の振り方で悩んでいたんだな〜というのが分かりますね。

 

出口さんのすごいところ②:めちゃくちゃ謙虚

出口さんが海外支社で勤務されていた時、外国籍の部下に他社動向をまとめた資料を作るよう指示したところ、なぜそれが必要か問われ、これまで慣習的に本来必要のない資料を作っていたことに気がついたそうです。

ここですごいな〜と思うのが、「いいから作りなさい」と部下を一喝したり、「まあ、ずっと作ってるし、そういうものだから」と理由を誤魔化したりせず、

「そういえばなぜ作っているのだろう。考えてみれば不要だな」と考えを柔軟に改められるところです。

私は今ですら少々頑固なところがあるので、例えば今後、部下を抱えるような立場になったり人を指導する役割になった時、こんな風に素直に考えを改められると思えませんでした。

出口さんは「自分の前提を疑ってみるのが大切」だと述べています。

 

また、別の章では若い人の意見を参考にし、見習うべきともおっしゃっています。

出口さんは、若い人たちはデジタル機器を「まるで自分の体の一部のようにスイスイ使いこなす」と感心されています。

若い世代というのは、どうしても上の世代から「近頃の若者は〜」と苦言を呈されがちです。

これは時代を問わず繰り返されているようで、

「かつては自分が苦言を呈される若者側だったのに、気がついたら自分も『近頃の若い人って〜』という考えになってしまっていた」

なんて発言をTwitterで見たことがあります。

人は年齢を重ねるごとに、自分の培ってきたものを信じたくなり、一方で新しいものへの抵抗感が増すのかもしれません。

出口さんのように柔軟で謙虚な姿勢を、いつまでも保ちたいものです。

 

出口さんのすごいところ③:旅好き

出口さんはかなり旅がお好きなようで、会社員時代も年に2回は1~2週間の休みを取って旅行に出かけていた、と言います。

(休みを取るために、キッシンジャーの言葉を借りて上司を説得するのが出口さんらしくて面白いと思いました。)

出口さんの旅行で一風変わっているのが宿泊先です。

出口さんほどの方であれば高級ホテルに泊まり、ラグジュアリーな空間(?)で日々の疲れを癒すのかと思いきや、

現地では高級ホテルから若者をターゲットとした安宿まで、様々なグレードの宿に泊まってみるのだと言います。

私も学生時代は旅行によく出かけていて、安いゲストハウスをよく利用していたので、その楽しさや魅力は分かります。

しかし社会人になってからは、普通のシティホテルだったりちょっと奮発してお高めのホテルに泊まってみたり、ゲストハウスを利用することはなくなってしまいました。

「まあ、社会人だしこんなもんだよね。あれは学生特有の楽しみ方」と、ある種勝手に決めつけていたのですが、やはり出口さんの考え方は柔軟ですね。

旅ではまず、高級ホテルに泊まってみるそうです。

「え、泊まる場所のグレードは下げていくより上げていった方が楽しそうじゃない?」なんて思いましたが、高級ホテルでアメニティーを貰っておくことで、後の安宿に泊まる時に便利だと言います。

出口さんは「少々セコい話ですが…」と書かれておりますが、なんだかお茶目で可愛らしい印象を持ちました。

 

出口さんのすごいところ④:仕事なんて人生の3割

出口さんは60歳を過ぎてからライフネット生命を創業されており、なんてバイタリティー溢れる方なんだ…!と思いましたが、どうも仕事人間というわけでは無いようです。

出口さんは人が生まれてから死ぬまで過ごす時間のうち、仕事は3割程度しかないと言います。

私なんかはその3割にメンタルをやられてしまったわけで、なんとも情けない気持ちになります。

要は捉え方が大事という話で、「人生全体から見ればどうだっていいこと」と受け流せるようになりたいと思いました。

出口さんは「仕事は人生の3割でしかないが、真剣にやらなくていいわけではない」と言います。

むしろ、どうでもいいことだからこそ、失敗なんて気にせずにやりたいと思ったことをやればいい、失敗してもどうせ多数派なんだし、と語っております。

 

私はこの本を通じて初めて出口さんという方を知りましたが、

本を読みながら、出口さんに「大丈夫、大丈夫」と背中を押されているような、そんな気持ちになりました。