スイカ食べたい日記

本・映画の感想、適応障害の経過、暴君な夫との日常

【映画感想】引っ越し大名!

「記憶にございません!」に引き続き、見ていて楽しいコメディ映画を選びました。

視聴後に調べたのですが、実在する大名・松平直矩のエピソードを基にしているようです。

歴史上の事実として、幕府が大名に力を付けさせないために参勤交代や国替えを行った、ということは知っていましたが、当時の国替え=引っ越しはこんなにも大変なのかと思いました。

 

主演は星野源さんです。星野源さんって、なんというかちょっと頼りなく情けないんだけど誠実で、次第に成長するような役どころがとても上手なイメージがあります。

本作でも最初は頼りない引きこもり侍が、最後はとても粋な計らいを見せる場面がありました。

全体を通して下ネタが多く(笑)、いわゆる男子校のノリといった感じで見ていて楽しかったです。

 

以下、ネタバレを含む感想です。

 

主人公が仕える松平家は幕府の都合で度々国替えをさせられており、本作では播磨姫路から豊後日田への引越しを命じられます。

その上これまでの15万石から7万石への減封となり、引越し奉行を命じられた主人公は家臣たちのリストラを敢行します。

 

リストラといっても、現代のように首を切ってサヨウナラ〜ではなく、再び国替えで石高が元の15万石に戻った時は必ず迎えに行くから、それまでは姫路で農家として頑張ってくれ、といったものでした。

そんなこと言われて「ハイ分かりました」なんて、すぐに言えませんよね。

国替えは数年おきにあるとはいえ、次いつあるかなんて分からないし、ましてや石高が増えるまで待っていたら、いつになることやら……

特に当時は「士農工商」と言われた時代ですし、武士が農民になるなんて…! とプライドを傷つけられた家臣たちも多かったことでしょう。

 

とある家臣は「自分はこんなにも松平家に使えてきた。それなのになぜ忠義者の自分がリストラされるのか」と主人公に問い詰めました。

主人公は「人望のあるあなただからこそ、姫路に残す家臣たちを、迎えに行くまで取りまとめていて欲しい」と告げました。

見捨てるわけではなく、本気で迎えに行くと考えているからこそ、この人選なんだなと思わされました。

普通だったら有能な人を残したいですもんね。

少し趣旨が違いますが、8代将軍徳川吉宗が大奥の美女50人をリストラした話を思い出しました。

こちらは器量の良い娘たちなら、大奥を出ても職にあぶれることはない、との理由として知られていますが、

どちらもリストラする理由が「いらないから」ではないところに優しさを感じます。

 

この武士から農家へのジョブチェンジですが、最近行われている航空業界から他業種への人材派遣と似ていると思いました。

お家存続のため農家へ転身する家臣と、企業存続のため他業種へ派遣されるCAさんたち。

状況は全く違いますが、個人レベルで見ればほぼ同じことなのかな、と思いました。

この映画が公開されたのは2019年の夏で、当時はコロナなんて影も形もありませんでした。

まさかその1年後に、組織存続のために自分が別の仕事に従事するなんて、誰も想像できませんよね。

 

さて、映画では豊後日田への国替えから15年後の国替えで、ようやく元の15万石に戻ることが叶いました。

主人公が姫路の家臣たちを迎えに行きます。見事な段々畑のシーンが美しかったです。

農家として生活していくうちに、家臣の一人は「天に生かされていることが分かった」といいます。

その家臣は、15年前のリストラの際、最も抵抗した内の一人でした。

彼は、主人公が迎えに来る前から彼を含む数名はここ姫路に残り、農家として生きていくことを決めていた、と語ります。

彼にとって農家になることは青天の霹靂とも言える出来事で、決して望んだ訳ではないはずです。

それでも、その仕事にやりがいを見出し、たくましくポジティブに生きていく姿に感銘を受けました。

今の私も、決して望んではいない状況にありますが、それでも彼らのように「天に生かされ」ながら自分なりの道を見つけていきたいと思いました。