スイカ食べたい日記

本・映画の感想、適応障害の経過、暴君な夫との日常

【映画感想】記憶にございません!

私はあまり映画を見ないのですが、休職中は時間もあることなので、気になっていたものをいろいろ見てみようと思います。

 

第一弾は三谷幸喜監督の「記憶にございません!」

シリアスな話は疲れてしまうかな〜と思い、コメディを選びました。

以下、感想ですが、若干ネタバレになるかもです。

 

記憶を失くした黒田総理(中井貴一さん)が「もうこんなの無理だよ…」と弱音を吐くところは見ていて少し辛かったです。

ただ全体的にコメディ色が強いため、メンタルが落ち込んでる時でも楽しめる作品でした。

 

平成史上最悪と言われた総理が、記憶を失くしたことで全くの別人となり政治を徐々に変えていきます。

小学校時代の担任の先生に連絡を取り、政治を一から学ぶ姿は見習いたいと思いました。

また、記憶喪失となり何のしがらみもなくなった黒田総理の姿に、休職中の自分を重ね、また一からやり直せるという元気をもらえました。

 

総理が心を入れ替え(たように見える)、政治の汚職や腐敗と立ち向かう姿は憧れます。(といっても描写はどこまでもコメディで、何度もクスッとさせられました)

これまで総理を馬鹿にしていた人や敵対していた人が、その姿に心を打たれ、力を貸す様子はまさに「仁政」だと言えます。

 

仁政は儒教の用語で、為政者が良い政治を行うことで周囲が付いてくる、という考え方です。

江戸時代の藩政によく用いられたと言います。

 

ただし、現実問題として考えると、複雑すぎる現代社会で「仁政」を行うことは非常に難しいと思いました。

例えば劇中に出てくるK2プロジェクト。

これは、総理の幼馴染が社長を務める建設会社に、不正に発注を行うという、まさしく実際の社会でありそうな話でした。

このプロジェクトを総理はすったもんだの末中止とし、ある種美談として描かれていますが、立場を変えれば美談で済まされない大事です。

 

たしかに不正で不当なプロジェクトでしたが、建設会社の一部門、一担当者からすれば、それは間違いなく自分の売上となるものだったはずです。

それが中止となると、その担当者としては「たまったもんじゃない」というのが実情だと思います。

さらに、工事の下請け会社、そのまた下請け会社のような規模の小さい会社にとっては、会社の存続自体危ぶまれることになり兼ねません。

政治家として正しいことをしたつもりが、別の誰かにとっては多大な損害を被るかもしれない。

 

いわば「あちらを立てればこちらが立たず」といったような状況ですね。

(まあ一番いいのはそんな不正な工事などそもそも計画しないことなのですが)

 

これとある種似たような状況は、このコロナ禍においても見られました。

経済を優先すれば医療が行き詰まり、医療を優先すれば経済が滞る。

どちらの立場も人の生活、生死が関わるため、一概に解決方法を見出せない難しい問題だと思います。

 

この状況で仁政を行うのであれば、まず政治家がすべきは国民と課題認識を共有することではないでしょうか。

先ほども申しました通り、どう手を打っても「あちらを立てればこちらが立たず」なのですから、立たない側にも、政治が優先して解決すべき課題を理解してもらう必要があると思います。

 

コロナ禍では、政府が経済と医療どちらを優先したいのか、イマイチ国民は理解していないと思います。

だから緊急事態宣言が出ていても出歩く人流は減らないのです。

優先して解決すべき課題を国民と共有(経済なのか、医療なのか)、そして「立たない側」には金銭の補償。

結果論でしかありませんが、こんな政治を私たちは望んでいるのかな、と思います。

 

もうすぐ総裁選が始まります。

私はこれまで、恥ずかしながらあまり政治に興味を持ちませんでした。

ただ働き始めて、自分の給料が税金として徴収されると、その使い道を司る政治は、自分たちで考えて選ばなければいけないと考えるようになりました。

 

「記憶にございません!」はとにかく笑って心がほっこりするコメディ作品でしたが、同時に政治についても少しだけ考えさせられました。